TDMA blog

ガーディアン・アドバイザーズ株式会社のTDMA(Tech Driven Management Advisory)チームがITに関する様々な情報発信をしていきます。 

「ベンダーロックイン」は企業の存続に直接関係する重大インシデント

こんにちは。高柳です。

 

ベンダーロックイン」という言葉を良く耳にします。言葉の通例自体はWikipediaなどを参照頂ければと思いますが、各種ITシステムの緊急事態でご相談を頂く多くのケースがこの「ベンダーロックイン」に起因するものです。

 

そもそも経営効率化のために使うテクノロジーを、専門業者であるベンダーと呼ばれる存在に外注すること自体は全く問題のない行為です。テクノロジーにそれまで縁もゆかりもなかった事業会社がエンジニアを採用したり、ソフトウェアやハードウェアに投資して何かを作ったりすることには大きなリスクが伴います。しかし、すべてを外注に依存してしまうことは問題で、ベンダーにロックインされる一つの要因になります。

 

ところで、特にITについてその開発や保守・運用を外注するか内製するかという議論の日米比較で面白い数字があります。

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なかなか直接的な数字がないため関連する数字を使って調べてみると、米国の内製比率が7割を超えるのに対して、日本の内製比率は3割に満たない状態になっています。つまり米国では内製主義、日本では外注主義だと言えるかもしれません。一体これは何を意味するのでしょうか。その点もこのポストで考えてみたいと思います。

 

ベンダーロックインの最も危機的な状況は、仕様書や設計書を含むドキュメントや、システムの全体像の把握、システムを構成する技術の理解といった全体像を事業会社が把握していないという状況です。つまり本来、システム検討当初にRFP(Request For Proposal)を書いているはずである事業会社(=発注者)がシステム全体を把握しているはずなのですが、いつの間にかシステムの把握そのものがベンダーに移管してしまって、従って全てのノウハウをベンダーに握られてしまい、事業会社からすればブラックボックスのような状態になってしまっているわけです。

 

IT内部統制構築の仕事の中で、私たちはベンダーコントロールについて詳しく助言させて頂いていますが、ベンダーとうまく協業していくための仕組みを会社としてしっかりと明文化しておく必要があります。同時に事業会社のIT担当部門(いわゆる「情シス」)に登用する人材のペルソナや布陣なども細かく検討する必要があります。

 

私がなぜ「IT前提経営®」という平たい言葉を使うかと言うと、もはやITの掌握は経営そのものだからです。「ベンダーに投げっぱなしにしていたら、何も把握できなくなり、経営が頓挫した」では、経営責任を問われかねない時代なのです。トップ自らがITやテクノロジーへの強い意識と好奇心をもち、ベンダーロックイン状態に陥らないよう、ITのイニシアチブを常に事業会社の中にあるようにすることがとても重要になります。


さて、冒頭で述べた、日本と米国の外注主義と内製主義の問題ですが、私が米国に調査に行ったとき、時価総額2兆円規模のある事業会社のCFOは、全社員の15-20%がITエンジニアやデジタルマーケティングの専門家という、いわゆる高度なIT人材だと胸を張っていました。これには驚いた訳ですが、その理由を聞くと「機関投資家に評価されるから」という理由をおっしゃいました。では、なぜ機関投資家が評価するかと言えば、内製主義である以上、ITを経営の一部と見做していることはもとより、アプリの開発/アップデート、ECの構築/更新、基幹システムのアップデート、BI(Business Intelligence)ツールによるデータの可視化や事業計画構築補助、CRM(Customer Relationship Management)を中心にしたMA(Marketing Automation)施策の実行など、無限とも思われる経営の「手続き」が「自前で」対応できることで「スピード経営に資するから」ということでした。まさに「IT前提経営®️」そのものです。

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この図は、私の大学院の講義である「リーディング産業論」で学生と議論しながら作った図です。多くの社会人大学院生は、この内製主義、外注主義の争点に興味があり、自らのビジネスでなんとか上手く解決したいと思っています。

 

一方で、技術が複雑化していく中、必ずしも上述の米国企業のように内製化だけでまかなえる訳ではありません。そこで景気の変数を入れることで、景気が良いときには内製化に傾き、景気が悪い時は外注化するのではないかというようなブレストの図です。

 

企業はこの揺れ動きの中でちょうど良いポジショニングを見つけていく訳ですが、1つ重要な点は、極端に外注してしまうと、その主導権を中に戻そうとしたときに、相当程度の労力を要することになるということです。あるいは、もはやイニシアチブを中に戻せなくなってしまっている状態の事案も多く見受けられます。

 

「IT前提経営®︎」時代に完全外注化し、ベンダーアンコントローラブルになった状態は、経営の危機といっても過言ではありません。

 

私どもの活動は、そうならないために何をすべきかを明確に助言させて頂き、また、万が一そうなってしまった場合は、どのようにイニシアチブを中に戻すのかを考えているのです。

 

ガーディアン・アドバイザーズ株式会社 パートナー

株式会社ウェブインパクト 代表取締役

立教大学大学院 特任准教授

高柳寛樹

 

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IT前提経営®︎アドバイザリーでは、ITに関して事業会社が抱える課題や疑問を網羅的にサポートするIT前提経営顧問®︎サービスの中で、適切なベンダーコントロール(健全な関係性の構築や、必要に応じた内容交渉による牽制など)をご支援させて頂いています。

ケーススタディ_IT前提経営®︎顧問

その他支援の事例をまとめた資料については弊社のIT前提経営®︎アドバイザリーページよりダウンロード頂けます。

また、高柳の著書はこちらよりご参照ください。

IT前提経営」が組織を変える デジタルネイティブと共に働く近代科学社digital)2020

まったく新しい働き方の実践:「IT前提経営」による「地方創生」(ハーベスト社)2017

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